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beer365 magazine ビアサンロクゴ

コラム

2015.10.27

アメリカのクラフトビール文化 Part 1 (販売店編)

貴戸“トム”光彬 貴戸“トム”光彬

私がクラフトビールと出合った2010年から、ここ最近私が見て感じてきたアメリカビール文化を紹介します。自身の経験談なので実際とは違う可能性もありますが、少しでもアメリカの雰囲気が伝わればと思います。

Photo by Ewan Munro on flickr
Photo by Ewan Munro on flickr

2010年のアメリカは、既にクラフトビールブーム

クラフトビールとの出合いは、オシャレな若者が集うアメリカ、カリフォルニア州ハリウッド市にあるバーです。そこにいたお客さんのほとんどが、カットしたオレンジが飾られているグラスで“ビールのようなもの”を飲んでいました。バーテンダーに「あれは何ですか?」と聞くと「BLUE MOON(ブルームーン)」と答えてくれました。

初めて飲んだBLUE MOONは衝撃でした。ビールといえば、とにかく苦くて、炭酸水にちょっとした味がついた飲み物としか、思っていなかったのですが、こんなに甘みがあって、苦みが少なくて、味わい深いビールが世の中にあるのかと。

メニューを見ると「BEER(ビール)」と「CRAFT BEER(クラフトビール)」に表記が分かれていました。BEERの欄には「BUDWEISER(バドワイザー)」「CORONA(コロナ)」「MILLER(ミラー)」などのいわゆる大手ビール、クラフトビールの欄にはBLUE MOONのほか「SIERRA NEVADA(シエラネバダ)」ほか、2〜3種類ほどのビールが書かれていました。このとき初めて「クラフトビール」という言葉を認識したのです。

それからは、ローカルのスーパーでビールの陳列棚を意識するようになりました。目につくクラフトビールはBLUE MOON、ほかにはSIERRA NEVADA、「SAMUEL ADAMS(サミュエルアダムス)」など。だいたい2割くらいがクラフトビールで、あとの8割はいわゆる大手メーカー製のビール。その中には「アサヒ スーパードライ」など、日本のビールもありました。 

数年前まではカリフォルニア州ロサンゼルスの大手スーパーでは大手ビールが陳列されていました
数年前まではカリフォルニア州ロサンゼルスの大手スーパーでは大手ビールが陳列されていました

レストランに出向いた際もクラフトビールがあるかをチェックし始めると、だいたい5軒中1軒の割合でクラフトビールを提供していることがわかりました。置いてある銘柄は、クラフトビールとしては有名どころのBLUE MOON、SIERRA NEVADA、SAMUEL ADAMSがほとんどでした。

2014年〜現在の小売店事情

ここ数年、年に数回はアメリカに行くのですが、そのたびにスーパーや酒屋の棚に並んでいる商品が変わっているのに驚かされます。さらに、レストランなどでのクラフトビール事情にも変化が見られます(こちらについては、アメリカのクラフトビール文化 Part 2 (飲食店編)で紹介します)。

まず、ここ1、2年のスーパーの棚には大手のビールがほとんどありません。BUDWEISER、MILLERや「COORS(クアーズ)」はどこへ……? 

ニューヨーク州マンハッタン市の大手スーパーでは、陳列棚の端に大手ビール
ニューヨーク州マンハッタン市の大手スーパーでは、陳列棚の端に大手ビール

「Trader Joe`s(トレーダージョーズ)」や「Ralphs(ラルフス)」など、何件かスーパーに足を運びましたが、中には100種類ほどビールを販売しているのに、大手のビールが一つも販売されていないスーパーもありました。 

ビールの棚を見る限り、クラフトビールの圧倒的な人気を感じます。しかし、そんな状況のアメリカでさえ、クラフトビールのシェア(醸造量)はビール市場全体の15%にも満たない状況です*1。

ちなみに日本のビール市場では、2014年時点では国内のクラフトビールと輸入ビールを合わせても売り上げは全体の1%前後しかありません*2。ここ数年、これだけベルギービール、ドイツビール、クラフトビールが盛り上がってきているのにまだまだ1%なのです。

話をアメリカに戻します。  一般的なスーパーの棚がほとんどクラフトビールということは、クラフトビールに力を入れているスーパーや酒販店はどうなっているのでしょうか。興味を覚えて見に行ったところ、私の想像を超える光景が広がっていました。 

アメリカカリフォルニア州トーランス市にある酒屋BEVMO(ベヴモ)という酒屋に陳列されているクラフトビールの棚を携帯のパノラマモードで撮影しましたが、3回撮らないと収まらないほどの奥行き。しかもこの写真は棚の表面だけで、実際は裏面にもクラフトビールが同じ規模で並んでいます。その数、1000千本はくだらないでしょう。さらに同じビールをずっと陳列させるのではなく、週や月替わりでどんどん新しい商品が入れ替わります。ビール好きにとっては、まさに天国です。

写真の棚はほとんどがアメリカで醸造されているビールですが、他の棚には海外のビールが陳列されていました。日本のビールでよく見かけるのは「常陸野ネストビール」です。 

常陸野ネストはアメリカのスーパーでも存在感を放つ。
常陸野ネストはアメリカのスーパーでも存在感を放つ。

日本ではあまり想像できないと思いますが、アメリカではスーパーや酒屋によっては、6本入りの箱から必要な数量だけを購入することができます。 

通常は箱(ケース)単位でしか売ってないビールが単品で購入できる棚。
通常は箱(ケース)単位でしか売ってないビールが単品で購入できる棚。

箱に残された半端な数のビールはどうするのでしょうか? それらは、「BUILD YOUR OWN SIX PACK(好きな6個入りケースを作ってください)」という、違う銘柄を組み合わせた6本セットで購入できる棚に置かれるのです。ほしいビールが箱でしか売っていない、でも同じビール6本はいらない、という時に便利なサービスです。

以上、アメリカの小売店のレポートでした。

日本のコンビニやスーパーも最近少しずつ、国内クラフトビール、ベルギービール、ドイツビールなどの種類が豊富になってきました。日本では、数多くのビールが醸造され、輸入されています。近い将来、これらのビールがアメリカのように、スーパーやコンビニの棚を埋め尽くしてくれるくらい豊富になると嬉しいですね。 

 

*1: BAオフィシャルプレスリリースより  

*2: 酒造組合調査より食品産業新聞社発表より

貴戸“トム”光彬

貴戸“トム”光彬

この著者の記事一覧

beer365代表。海外で18年間過ごし日本へ帰国。音楽業界で8年勤め、現在貿易関連会社勤務。2010年、仕事がきっかけでクラフトビールと出合う。日本地ビール協会( JCBA)認定ビアテイスター、ビアコーディネイター。

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