コラム
2015.12.25
連載:ビアジャーナリスト・佐藤翔平のペアリング実験室01/シエラネバダ ペールエール
ビアジャーナリストの佐藤翔平が、ビールと料理のペアリングの相性を検証。第一回目は 「Sierra Nevada Brewing Co.(シエラネバダ ブルーイング)の「 PALE ALE(ペールエール) 」。鮮烈なカスケードホップのキャラクター、それとバランスをとるモルトの甘味が広がる。ふくよかながらも爽快なテイストに、あなたならどんな料理を合わせるだろうか?
美味しいビールが、もっと美味しくなるペアリング!
はじめまして。飲食業に従事する傍ら、ビアティスティングとペアリング(食べ合わせ)を自主研究するビアジャーナリスト、佐藤翔平と申します。
まず、初めに質問させてください。
「今晩お飲みになるビールは決まってますか?」
「それに何を食べ合わせますか?」
「なぜ、それを組み合わせるのですか?」
「ん、何だろ…?」と、迷ってしまった方は、ぜひこの連載をご覧頂きたい! 「いや、ビールだけで充分美味いからいいよ」とおっしゃる方、それもごもっともです。しかし、ビールとフードを合わせなければ味わえない“至福”を体験してみませんか?
この連載では、ビールの味わいと共に「家で試したくなる料理とのペアリング実験」をレポートします。味・香り・食感…。なぜこの料理にビールが合うのか、合わないのかを感じ、考えてほしい。この記事を通して、ビール好きな皆様が素敵なビールと料理のマリアージュに出合えることを願っています。
2015年、日本に初上陸したアメリカンビールをお供に♪
今回ご紹介するビールは、米国・カリフォルニア州にある「Sierra Nevada Brewing Co.(シエラネバダ ブルーイング)」が造った 「 PALE ALE(ペールエール) 」です(以下、シエラネバダ ペールエール)。アメリカン ペールエールの名作と謳われるこの逸品、2015年春に国内販売が開始されたことに歓喜の声を上げたのは私だけではないはず。1980年の創業当時から醸造されている銘柄で、現在でも米国のマイクロブルワリー総売上の60%を占めると言われる大人気ぶりは、まさに全米の“King of Pale Ale”です。
1980年の創業時から醸造されている全米No.1の伝説的ペールエール。Cascadeホップの使用が現在の「クラフトビール先進国」アメリカに続...
まずは、シエラネバダ ペールエールが持つ味わいの特徴を挙げていきましょう。
①グレープフルーツ・シトラス・レモンのような、鮮明なホップ香が鼻腔をくすぐる。軽やかなモルトの香りと共に、力強くも優美な印象のアロマ
②もっちりとした泡と濃いゴールドの液体を眺めたら、そっと一口。甘いトーストのようなモルト・フレーバーに誘われた後、ホップの香りが苦味と共に押し寄せる。エグ味はなくクリーンな味わい。青々しくフレッシュで、エステル香と共に心地よい余韻が広がる
③しっかりホップの特徴を立たせながらも、それに依存しない麦芽風味とのバランス。飲み応えがありつつも、すっきりとした後味
さぁ、ビールに合わせる料理は頭に浮かびましたか?
特徴を分類すると、ペアリングはグッと考えやすくなる
「ペアリングを考える」とは、仲人のようなもの。先程のようにまずはどんな人柄(=香り、味わい)かを知り、相性の良さそうな人をイメージ。そのお相手にこういう方ですよ~、どうですか~?とご紹介します。互いの持ち味を気に入れば、マリアージュ(=結婚)が成立。初めての協同作業! による第三のフレーバーが生まれるのです。シエラネバダ ペールエールの特徴に合わせ、私ならこうアプローチしてみます。
①同じく柑橘系の風味を伴ったもので、優美なホップ香と同調、増強を図る
②ゴールド色系統のビールにはシンプルに塩味を合わせた。油を用いた料理でも口当たりを加減できるボディを持つ。ビールに甘味があるので、ほろ苦いセロリでアクセントを。セロリとは異なる食感と香りを持つキノコ類を使って、変化を楽しみたい
③ アメリカン=肉のイメージ。焼いた豚肉でロースト感と旨味のレベルを合わせる
「セロリとエノキダケの肉巻」との相性は★★★★☆
以上をふまえ、今回提案したいペアリング実験は「 セロリとエノキダケの肉巻」です!! セロリとエノキダケを豚バラ肉で巻き、焼き上げたシンプルな一品。塩胡椒とレモンを添えて。セロリとエノキダケ、2種の風味とジューシー感、異なる食感が癖になります。
肉巻をほおばり噛み締めたら、ペールエールをコクリ。セロリのシャキシャキ感に、瑞々しいホップ・フレーバーが生野菜を食べているような新鮮さを加えてくれます。モルトの甘さは肉のロースト感で深みが生まれ、旨味を吸ったエノキダケのジューシーさもしっかり受け止めました。ホップはキノコの菌臭さを覆ってくれるという、予想外の効果も。レモンとの相性も言わずもがなで、油を分散し苦味の衝撃をソフトにしてくれています。我ながら、これは自信を持ってオススメできるペアリング。
実験結果は…、5点満点中★★★★☆です!!
ふと閃きました! 薄切りの豚肉で蒸したスライスカボチャを巻き、タイムやローズマリーを降ります。これを焼き上げ、塩でいただいても合いそうな予感。シエラネバダ ペールエールは、ジューシーなお肉とも新鮮な野菜とも相性が良さそうですね。
次回は私の第二の故郷、“東北のある醸造所”のビールに、お豆腐を使った“あの料理”を合わせてみます。ひとアレンジを加えて簡単美味しく。ご期待ください!
【ビアプロフィール】
商品名:シエラネバダ ペール エール
アルコール度数:5.6%
原材料:麦芽・ホップ
醸造所:シエラネバダ ブルーイング(米国カリフォルニア州)
問い合わせ先:ナガノトレーディング
TEL:045-315-5458
■セロリとエノキの肉巻き(2人前)
【材料】
豚バラスライス 8枚
セロリ 10cm
エノキダケ 1/4株
塩 少々
コショウ 少々
小麦粉 少々
レモン 適宜
【作り方】
1. セロリは筋取りをして縦半分に、えのき茸は石づきを切り落とし、食べやすい大きさに割く。長さを揃え(8~10cmほど)、冷水に10分ほど漬けておく
2. 豚バラを2枚斜めに並べ、片面に軽く小麦粉をなじませる。水気を切ったセロリ(エノキダケ)をぐるぐる巻く
3. 2.にコショウをふり、グリルで中弱火程度で焼き上げる
*フライパンでも可。グリルの方が香ばしく焼けるのでオススメ
4. 一口大に切り、塩をふる。お好みでレモンをしぼって出来上がり
*分量は目安です。お好みでご調整ください。
佐藤翔平
ビアジャーナリスト。酒類に詳しくなる為にビールから飲み歩き始め、その多様さに魅了される。飲食店勤務の傍らティスティングを行い、その記録は500を超える。JBCA認定ビアテイスター。ジャパンビアソムリエ協会(JBSA)認定ビアソムリエ。
1980年の創業時から醸造されている全米No.1の伝説的ペールエール。Cascadeホップの使用が現在の「クラフトビール先進国」アメリカに続...
シエラ ネバダ ブルーイング
アメリカ合衆国 1075 E. 20th Street Chico, California
+1-530-893-3520
ホームブリュワーとして始まったビールが代名詞となる「シエラネバダ・ペールエール」を産み出し、その後30年以上に渡って愛され、人々を虜にしてき...