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beer365 magazine ビアサンロクゴ

コラム

2019.11.08

【03】1 Day 1 Beer プロジェクト─LAビアシーンから感じるニューウェーブ

千田 晋 千田 晋

ブラジル・サンパウロを旅立ち、次の訪問地はアメリカ・ロスアンゼルスです。
25年振りに訪れたLAはやはり随分と様変わりしていて、とてもキレイでクリーンな街になっていました。

刺激的な美術館が並ぶ比較的新しく整備されたダウンタウンから、LA市内では数少ない歩いて行けるブルワリーへ行ってきました。

 

@MUMFORD BREWING

LAのクラフトビアシーンが活性化してきたのは約5年前からだそうで、醸造を開始して5年が経ったMUMFORDは今のLAビアシーンの中核を成しているでしょう。
ウェアハウスを改装したコンクリート打ち抜きの空間は、西海岸らしい垢抜けた開放感とリラックスした雰囲気が楽しめます。先ずフライトから始めた中で特に印象的だったのがこれです。

◆MUMFORD BREWING Roki/ポーター/Alc5.2%/IBU na

オレゴン州ポートランドの「Stumptown Coffee」のコーヒーを使用したコーヒーポーターをナイトロでサーブしているのですが、シルキーな口当たりとポーターらしい軽いボディの上で風味豊かなコーヒーフレーバーとモルトの焙煎香が絡み合いながらスルスルと喉に落ちていく、非常に飲み易いコーヒーポーター(写真の一番右)。ナイトロでのサーブが上手くビールの持ち味に相乗効果を与えています。

醸造とバーを担当するアダムは、人一倍のビール愛とフレンドリーな人柄が、LAビアシーンだけに留まらない人気者。この日は自信作のラガーが売り切れて飲ませてあげられなかったことを悔やんでいました。ラガーに入れ込んでいる彼は、ホッピーなビールやサワー人気を経て、もっとオーセンティックでビールらしいビールを志向しながら次の新しい流れを模索しているところに、発展中のビアシーンの面白さを感じます。

そんなMUMFORDから車で10分も走らずにブルワリーが点在するエリアにあるこちらへ行ってきました。

@INDIE BREWING COMPANY

MUMFORDと同じように、コンクリート打ち抜きのウェアハウスにブルワリーとパブスペースが併設された空間です。ここでも色々と飲んだ中で、これが印象的でした。

◆INDIE BREWING COMPANY Who's Lime Is It Anywhaze?/NE-IPA/Alc6.5%/IBU na

アメリカはファンキーなネーミングのビールが多くて好きですね。サンディエゴ最古の醸造所「カールストラウスKARL STRAUSS BREWING COMPANY」とコラボレーションしたこのNE-IPAはアメリカのデザート、キーライムパイにインスパイアされていて、「Cashmere(カシミア)」と「Wakatu(ワカトゥ)」ホップをダブルドライホップし、バニラビーンとキーライムを配合したビール。軽めなボディで爽快感があり、デザート感覚で楽しめる味わいからは、とても自由でクリエイティブな発想を感じます。

ブルワー同士が話せばそれぞれのブルワリーの考え方を尊重し、飲み手としてはお互いの好みのビールを尊重する。これはアメリカ人気質に由来するものでしょうか。爽快な青空と心地良い気候に影響されてか、フレンドリーにお互いを尊重し合い、そしてフリーにビアカルチャーを楽しみながら前進していく彼らからは、インポートされたアメリカンクラフトを日本で飲んでいるだけでは決して伝わってこない、現地の今の新しい風が感じられて刺激的ですね! 

千田 晋

「Brewer's Beer Stand 34」オーナー。映画業界を経てクラフトビール業界入り。ブルワーとセールスに従事し、クラフトビアバーをオープン。海外在住時に魅了されたビールの自由さを、様々なカルチャーを交えて多くの人に伝えたい!