コラム
2020.01.03
【10】1 Day 1 Beer プロジェクト─サワー人気が最も加熱していた北欧ビアシーン
2カ月に及ぶビアライゼもいよいよ終盤に差し掛かり、今回はスウェーデン・ストックホルムと今回の旅の最終地、ノルウェー・オスロのビアスポットをご紹介していきます。
北欧特有の短い日照時間は冬の寒さも相まって、どこかひっそりと生活しているような独特なゆったりとした時間が流れています。しかしながら、北欧ビアシーンはなかなか刺激的でした。
@STOCKHOLM BREWING Co.
2012年に現在のブルワリーをオープンしたSTOCKHOLMは、市内港湾地区の広い敷地を利用した市内最大規模のブルワリー。近隣諸国に出荷する程の生産規模を有するブルワリーの様子は、解放感のあるタップルームからガラス越しに見ることができます。この日は缶詰作業を見ながらブルワリー一押しのビールを飲んでみました。
◆STOCKHOLM BREWING Co. Gin Tonic Sour / サワー / Alc 5.0%/IBU na
ストックホルム市内にある蒸留所、Stockholm Branneriとコラボした、ジントニックに使われるジュニパーを配合したジントニックサワーエール。その他にレモンやライム、コリアンダーなどのスパイスも配合している人気液種で、レシピ改良を行いながら継続的にリリースしているようです。
ドライなボディにフワリと香るスパイスの風味が、ジュニパー由来の風味と不思議な調和を感じさせます。強すぎない酸味がフィニッシュを軽やかにしてくれる、何ともクリエイティヴィティをくすぐられるビールです。
スウェーデンは法律上の制約で市内にブルワリーを建てるのが難しいらしく、ブルワリーやブルーパブを見かけることはありませんでした。しかし、やはりブルワリーを間近に見ながらそこで造られたビールを飲むのは、それが美味しければ美味しい程に格別ですね。
そして鉄道で移動した、いよいよ今回の旅の最終地、ノルウェー・オスロ。こじんまりとしながらも、尖ったビールが並んでいました。
@EIK & TID
創業して3年、タップルームはオープンしてからまだ半年のEIK & TIDは、オーク樽で醗酵させるサワーに特化したブルワリーです。ノルウェーで最も尖ったレシピのビールを造るブルワリーの一つといえるでしょう。
日本でいうと佐川急便の集配センターが入っていそうな、ちょっと街の外れにある倉庫兼事務所のようなビルに位置しています。週末だけブルワリー設備を移動して客席を用意しタップルームを営業する面白いスペースですが、クールでリラックスした雰囲気が漂う、何とも素敵な空間です。
◆EIK & TID OSLO / サワーラガー / Alc 5.1%/IBU na
ノルウェーの野生酵母を使用しオーク樽で発酵させたサワーラガーですが、フルーティーで若干草っぽさを感じさせながら絶妙な酸味がアクセントとなり、ラガーらしいクリーンな喉越しでスルスルと飲めてしまう、非常にドリンカブルで全体のバランスが絶妙なビールでした。
今回のビアライゼの中で、サワーが広く一般化していることを特に痛感しました。この北欧2か国で訪れたビアスポットでサワーが並んでいない場所は一つもなく、サワービールが北欧ビアシーンにおいて重要なビアスタイルであることが窺い知れる、大変面白い状況を体験してきました。
さて、約2カ月に及んだビアライゼはこれで終了となります。かなり駆け足で綴った内容で、ビールにフォーカスするあまり、旅の情緒をお仕えすることができませんでしたが、次回はコラム最終回として、今回のビアライゼから感じた感想を織り交ぜたエピローグで締めくくろうと思います。
千田 晋
「Brewer's Beer Stand 34」オーナー。映画業界を経てクラフトビール業界入り。ブルワーとセールスに従事し、クラフトビアバーをオープン。海外在住時に魅了されたビールの自由さを、様々なカルチャーを交えて多くの人に伝えたい!