コラム
2016.06.16
台湾のクラフトビールを求めて~ハードコアブルワリー~<01>
私は昨年から何度か台湾を訪問し、主に首都・台北でのビアバー巡りや台北近郊に位置するブルワリーの見学をしている。台湾では、数年前の日本と同じく急速にクラフトビールが普及しており、特に日本よりも平均的に 10歳ほど若い年齢層がクラフトビールを楽しんでいる印象を持った。飲食物の値段が日本に比べてかなり安い台湾で、日本と同等かそれ以上の値段のクラフトビールを多くの若者が楽しんでいるビアシーンには興味をそそられる。今回台湾のビアシーンを紹介すると共に、今後もリサーチと発信を行っていくつもりだ。
イベントで一際目を惹いた「ハードコアブルワリー」
2015年10月、最新クラフトビール事情をリサーチすべく台湾へと渡った。目的は台北で開催されたクラフトビールのイベント「精釀啤酒嘉年華」に参加するためだ。会場は100年の歴史がある日本統治時代の酒蔵をリノベーションしたレトロなアート・イベント空間「華山1914創意文化園區」で、台北の地下鉄、MRT忠孝新生駅近くに位置する。台湾クラフトビール界の老舗である「金色三麥社」が主催し、台湾、日本をはじめ世界から 40社が参加。今回が2回目の開催となる。
地元台湾の出店メーカー は10社。中でもイベントコンパニオンが微笑む、ひときわ目立つブルワリーのブースが目に留まった。それは「哈克醸酒(英語名:Hardcore Brewery、以降 ハードコアブルワリー)」。長髪がトレードマークの同社代表、陳銘徳(チェン・ミン・ド)さんにビールをサービングしていただきながら、気さくな感じで話を聞くことができた。台湾ではまだビールを飲むのは男性が圧倒的に多いため、ブースにイベントコンパニオンを呼んで華やかにしているとのことだ。この一風変わったブルワリーのことをもっと知りたくなり、ブルワリーへの訪問を約束した。
台北郊外のハードコアブルワリーへ
クラフトビールイベントから3ヶ月後の 2016年1月、新北市新莊區にあるハードコアブルワリーを訪問した。台湾では法律により台北市内でのブルワリーの設置は許可されないため、クラフトビールブルワリーは台北周辺の都市に立地している。新北市は人口400万人の台湾最大の都市で、首都台北を取り囲むような、ドーナツ状の衛星都市だ。「淡水」や「九份」などの有名な観光地も、この新北市にある。そのなかでハードコアブルアリーのある新荘区は台北中心地から東に位置し、台北の中心地からタクシーを使って 30分ほどで行くことができた。
なぜ「ハードコア」なのか?
私は常々「なぜ社名が“ハードコア”なのだろう」と疑問だったのだが、同社の事務所に入ってすぐ、その謎が解けた。多くの楽器類が片隅に置いてあったのだ。ハードコアブルワリーの名称も社長の陳銘徳さんが長髪なのも、陳さんがエレキギターを弾くミュージシャンであることに由来していた。事務所で雑談中、事務所に置いてある楽器を見た友人が「ブルワリーの名前は『ハードコア』にしよう!」と言ったのをきっかけに即決したという。
次回は陳さんがハードコアブルワリーを立ち上げたいきさつや、造っているビールを具体的に紹介しよう。
SHIBU
ビアフォトグラファー。ビアテイスター、ビアジャッジ、ビアソムリエを取得し、審査会やイベントを通じてビールの知識、仲間との交流を深めている。ビールと写真をテーマとしてビールの魅力を伝えていきたい。