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コラム

2016.04.01

ビア・アンバサダー講座 第2回:インポーター編(#01:商品選別)

貴戸“トム”光彬 貴戸“トム”光彬

日本では様々な国で造られたクオリティの高いビールが飲めます。これらのビールはすべて「インポーター」によって、日本の小売店、飲食店、そして皆様に届けられています。 今回の講座では「インポーター」の業務を紹介していきます。

photo by Seattleye on flickr
photo by Seattleye on flickr
ビールやワイン業界でよく耳にする用語「インポーター」とは、輸入商社のことです。日本で見かける海外の電化製品、車、洋服、食べ物などの多くは、イン ポーターによって日本に入ってきています。インポーターの主な事業内容は、海外の商品を日本の法律が定める安全基準に適合させ、国内に流通販売を行うこと です。


簡単にまとめましたが、実際は多くの作業を伴います。今回はビールがどのようにして日本に輸入されているかを、商品選別、運搬、通関、管理、販売という5つの項目に分けて紹介します。今飲んでいるビールの品質が本国で飲むのと同じようにキープできているかどうかは、インポーターが大きく左右するのです!

最大のハードルは、商品選別!

世界には、数え切れないほどのブルワリーが存在します。インポーターの多くは、現地に行き、一つ一つのビールを味わって、商品の選別を行っています。そこで美味しいと思ったビールを契約するのですが、この契約に至るまでが大変です。

まず、ビールには賞味期限があります。短いもので数週間、長いもので1年以上(数年熟成させて飲めるビールもあります)。現地で美味しいと思っても、賞味期限が短いと日本で販売する前に賞味期限が切れてしまいます。これは他に輸入されているアルコール類と比較することで、その取り扱いの難しさが分かります。 白ワインは一般的に1〜2年、赤ワインは賞味期限がなく、ウィスキーやウォッカのようなハードリカーも賞味期限がないと言われています。このように賞味期限がない商品は、小売店もインポーターも長い期間保管できるので、商品を取り扱ってもリスクが少ないです。しかしビールには賞味期限があるため、小売店にもインポーターにも、せっかく購入したビールが賞味期限切れで販売できなくなるというリスクがあります。

美味しくて賞味期限も輸入に適していれば(一般的に製造から6ヶ月〜8ヶ月)、次はブルワリーとの交渉です。どのブルワリーも日本で販売できるチャンスに飛び付くわけではありませ ん。ブルワリーの規模によっては製造できる数量が限られてしまうため、小規模であれば自国での商売を優先するでしょう。また契約するにあたり、年間最低購入量を提示してくるブルワリーもあります。インポーターはその量が1年間で販売するのに妥当かどうかを見極めなければなりません。

さらに最近は職人気質のブルワーが多いため、「私達が作った自信作をちゃんと美味しい状態で日本人へ提供してくれるのか?」という部分に妥協のないことがあります。輸送手段、保管方法、日本側での配送方法、日本ではどのようなお店で販売されるのか? などなど細かい部分までこだわるブルワーが多いのです。自国では美味しいと言われているビールが日本で美味しくないと言われては、せっかく築いてきたブランドイメージが崩れてしまいます。もちろん、インポーター も品質管理を保証できなければ契約にいたりません。

これ以外にも、商品選別にはもっと多くの細かい難題があります。もちろん味が一番大事ですが、それだけでは契約に至りません。インポーターは賞味期限、契約の最低販売数量、在庫など様々なリスクを考えて慎重に商品選別をしています。そして今皆さんが飲んでいる海外のビールは、その様々な条件をクリアしたビールなのです。「海外で飲んだ美味しいビールが、なぜ日本に入ってこないのだろう?」と思ったことはありませんか? もしかしたら、上記であげたような課題があるのかもしれません。

次回は、海外から日本への輸送方法について紹介しましょう。 

貴戸“トム”光彬

貴戸“トム”光彬

この著者の記事一覧

beer365代表。海外で18年間過ごし日本へ帰国。音楽業界で8年勤め、現在貿易関連会社勤務。2010年、仕事がきっかけでクラフトビールと出合う。日本地ビール協会( JCBA)認定ビアテイスター、ビアコーディネイター。