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beer365 magazine ビアサンロクゴ

コラム

2020.01.10

1 Day 1 Beer プロジェクト─世界のビアシーンから俯瞰する、日本のビアシーンのこれから。【エピローグ】

千田 晋 千田 晋

2019年10月22日に中部国際空港を出発、約2カ月に及んだビアライゼから年末に帰国しました。私のビアバーBrewer's Beer Stand 34も無事に年末年始の営業を終えることができ、今ようやく落ち着きながら今回の旅を振り返っています。

訪問した街は、サンパウロ、ロスアンゼルス、サンフランシスコ、オースティン、デトロイト、ニューヨーク、リスボン、マドリード、パリ、ブリュッセル、アムステルダム、ベルリン、ストックホルム、オスロの計14カ所。

時間が足りずに行けない国や地域が幾つもありましたが、移動しながらランダムにピックアップした訪問地で常に新しい動きを探し求めました。旅の中で改めて痛感したのは「クラフトビールは、世界共通の文化として世界の至るところに存在する」ということでした。その中でもやはり、アメリカ発クラフトビール文化の影響力が強いと感じています。

そんなクラフトビール先進国アメリカでは、ピルスナーに対する注目が高まっているのが一番印象的でした。特にロスアンゼルスやニューヨークで話した熱心なブルワー達は皆、ピルスナーに対する意気込みを語っており、ピルスナーを醸造していないブルワリーはクールではないという風潮すら感じました。

決してインパクトのあるテイストやトリッキーなレシピではなく、オーセンティックな味わいのビールへの回顧です。常にクリアさが求められるピルスナーは、ブルワーの腕前がビールの出来不出来に反映されやすく、それ故に醸造の面白さとブルワー自身のプレゼンスを発揮できることが、大きな要因のように感じられます。

ブルックリンでは毎年春に、ブルックリン地区全てのブルワリーのピルスナーだけを集めたイベントを開催しているほど。クラフトビールの次のトレンドに、いよいよ本格的なピルスナー/ラガーが来るのではと感じました。

そしてもう一つ、今回の旅で実感したのが、サワービールの存在の大きさ。サワーが繋がっていないビアスポットの方が少なく、どの地でもトレンドの域を出て既に市民権を得たビアスタイルとして確立されています。サワーしか造らないブルワリーもあるほどで、その点は日本とは大きく状況が異なっていました。

更に、個人的に人生で初めて訪問したヨーロッパは、長い歴史と近代の文化がミックスする様が印象的でした。ビアカルチャーも同様で、100年以上前の醸造所を改造したタップルームやクラシカルなビアバー、そしてケラービールがそこかしこで気軽に楽しまれている様子など、古い慣習がクラフトビアカルチャーに入り組んでいるさまを窺い知ることができました。こういうのはやはりヨーロッパ特有で、色々なインスピレーションを得ることができて刺激的でしたね。

2カ月という時間の中で可能な限り色々なビールを飲みながら沢山の人に出会い、様々な造り方や飲み方、楽しみ方を見ながらクラフトビアカルチャーが日々進化、多様化していることを肌で感じた、大変有意義なビアライゼになりました。

書きたいことがまとめきれないほどに多くのものを見てきましたが、どの地に居ても共通して感じたことは「日本のクラフトビールのクオリティは、世界に引けを取っていない」こと。そして「どの地でも地元のビールを楽しむ『ドリンクローカル』文化が確立されている」ことでした。

現在、国内のブルワリーは400カ所を超えていますが、日本のクラフトビール文化が更に活性化するためには何が必要なのか。今回の旅行全体を振り返ってとりわけ印象深かったのは、ビアシーンが成熟している場所であればあるほどに、トレンドに左右されずオープンマインドにレイドバックしたスタンスでビールに向き合い楽しんでいる姿でした。

どこか地に足の付いたこの感覚は、今の日本のビアシーンにはあまり感じられないもので、今後クラフトビールがもっと一般的な飲み物になっていくキーになるのではないかと感じています。

これは私の主観ですが、地ビール解禁最初の20年間は日本のクラフトビールのレベル向上のフェーズだったとすれば、これからの20年間はそのビールをどうエンジョイするか、飲み方・楽しみ方を造り手も飲み手も皆で充実させていくフェーズになるのではないでしょうか。

そのためにも私は、今後もクラフトビアシーンに携わり続けながら、様々なインスピレーションを発信し続けていこうと思います。

ちなみに次は、日本国内をビアライゼしたいですね。

皆さまも、ビアライゼしてみてはいかがでしょうか? ビールの楽しみ方が広がりますよ。 

【Brewer's Beer Stand 34】

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千田 晋

「Brewer's Beer Stand 34」オーナー。映画業界を経てクラフトビール業界入り。ブルワーとセールスに従事し、クラフトビアバーをオープン。海外在住時に魅了されたビールの自由さを、様々なカルチャーを交えて多くの人に伝えたい!