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コラム

2016.02.03

連載:文脈で読み解くビール考04/バレルエイジ、サワー、ドライ。一周回って老舗がアツい

沖 俊彦 沖 俊彦

いきなりですが、「ドライなウッドエイジのサワーエール」が絶対に来ます。断言します、絶対に来る。もうすでに海外では流行っていますから、この流れは遅かれ早かれ日本にも来ます。

Russian River Consecration(ロシアンリヴァー コンセクレーション)/photo by:Bernt Rostad
Russian River Consecration(ロシアンリヴァー コンセクレーション)/photo by:Bernt Rostad

これから間違いなく“来る”3つのキーワード

まずは、「ドライなウッドエイジのサワーエール」のポイントを3つに分けてお話ししましょう。

最初に「ドライ」。現在クラフトビールの大きな傾向として、フィニッシュのドライなものが好まれます。甘くて重くてべっとりしているものよりも、飲み終わるとスッと甘みが消えてベタベタしないものが良しとされます。すっきりした、甘みのないものが受けているのです。具体的にはきちんと発酵させきって残糖分を極力減らし、ホップの苦みでしっかり切るようなものをご想像ください。

次に「ウッドエイジ」。ウッドは英語で"wood"、つまり木のこと。エイジは"Age"。熟成牛肉のことをエイジングビーフなんて言いますよね。あの「エイジ」のことで、熟成を指します。クラフトビールシーンで現在注目を浴びているのが「ウッドエイジ」こと「木樽熟成」です。現代のビールは通常金属製のタンクで熟成させますが、木樽で熟成させるとその風味がビールに移り、独特の味わいになります。木樽にしか出せないこの風味がビールファンを熱狂させているのです。(樽は金属製タンクより小さいため、リリースできる本数も少なくなります。その希少性も相まって評価されている、という点も忘れずに)

最後は「サワー」。"sour"、つまり酸っぱいということ。ビールに酸味があるということは古くなって腐敗しているのではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。意図的に酸味を加えたビール「サワーエール」が世界中で本当に流行っています。いわゆるビール酵母とは別に、乳酸菌などの酸味を発生させる酵母を使用して作ります。お酢っぽかったり、ヨーグルト風だったり、酸味の種類にも色々ありますが、全体の傾向として「酸っぱい」は好意的に受け取られています。

ということで、ドライなウッドエイジのサワーエールが来ます。例えば、アメリカ・カリフォルニア州の醸造所「Russian River Brewing(ロシアンリヴァー ブリューイング)」「Russian River Consecration(ロシアンリヴァー コンセクレーション)」。アメリカのビールレビューサイト「ratebeer」で100点を獲得するほど評価の高い、ドライなバレルエイジのサワーエールです(*)。泣く子も黙るロシアンリヴァー。値段もそれなりにしますが、激しく美味しいです。でも、とにかく入手が難しい。アメリカ本国で消費されてしまうので、日本で入手することは不可能。悔しいですが、これが現実です。

ローデンバッハ グランクリュ、まずはここから始めてみましょう

極端な例を挙げましたが、「ウッドエイジ」の部分でお話しした通り、この手のビールは生産量が限定的になりますからファンの間で取り合いです。日本では木樽の入手自体が難しいので国産バレルエイジサワーエールがほとんど作られていません。一部あるにはあるのですが、お勧めしたくなるほど美味しかったものがほとんど経験に無く……。うーん、すみません。

高くなくて、手に入りやすい、ドライなウッドエイジのサワーエールはないものか? 大丈夫です、ちゃんとあります。ベルギー・フランダースレッドエールの傑作ブランド「Rodenbach(ローデンバッハ)」。まずは「Rodenbach Grand Cru(ローデンバッハ グランクリュ)」をお試しください。木桶で寝かせた、バルサミコ酢のような風味を持つベルギー伝統のサワーエールです。木樽のニュアンスは派手ではありませんが、ドライなフィニッシュ、旨味のある酸味を感じていただけると思います。美味いです、保証します。ローデンバッハ グランクリュが嫌いなサワーエールファンがいたら私が説教しに行きますので(笑)。

ローデンバッハ醸造所では全銘柄がウッドエイジのサワーエールです。昔から木樽で酸っぱいビールを作っています。古い醸造所であるのは間違いありませんが、今まさにシーンのど真ん中を走っています。クラシックにして最先端。一周回って老舗がアツいのです。

*注
一般的に「バレル」というと樽限定になってしまいますが、本稿では「フードル(木桶)」も含んだ概念で考えているため「ウッドエイジ」と表現しています。

沖 俊彦

CRAFT DRINKS運営責任者。1980年生まれ。都内酒販店にて「欧和」の担当を務めた後、2012年大月酒店に移籍。2015年「CRAFT DRINKS」を立ち上げ現在に至る。ビール品評会審査員も務め、セミナー講師も多数。セミナーや勉強会も開催。詳細やお問い合わせはtoki@craftdrinks.jpへご連絡ください。CRAFT DRINKS BLOGCRAFT DRINKS FACEBOOK

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