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コラム

2016.02.05

連載:ビアジャーナリスト・佐藤翔平のペアリング実験室04/キリン 一番搾りスタウト

佐藤翔平 佐藤翔平

ビアジャーナリストの佐藤翔平が、ビールと料理のペアリングの相性を検証する連載、第4回目。「キリンビール」の「 キリン一番搾りスタウト」は、苦みを伴うローストした深い味わいと、軽やかな飲み心地を両立した一杯。あなたならどんな料理を合わせるだろうか?

キリン 一番搾りスタウト。フルーティーな香りにクリーミーな口当たり。若干の酸味と焙煎した苦味の余韻を持つ
キリン 一番搾りスタウト。フルーティーな香りにクリーミーな口当たり。若干の酸味と焙煎した苦味の余韻を持つ

進化し続ける大手の黒ビールを味わう

今回ご紹介するビールは、「キリンビール株式会社」の「キリン 一番搾りスタウト」(以下、一番搾りスタウト)です。


同ブランドは2007年発売を開始。「スタウト」とは英国生まれのエールです。日本の公正競争規約では「スタウト=濃色麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味が特に強いビール」と定められており、必ずしもエール(上面発酵)酵母を使う必要はなかったため、一番搾りスタウトは当初ラガー(下面発酵)酵母で造られていました。2014年のリニューアル後は、スタウト本来のエール(上面発酵)酵母に変更。日本人好みのキレの良い「飲みやすさ」に加え、コク深い「芳醇さ」が加わっています。

では、一番搾りスタウトが持つ味わいの特徴を挙げていきましょう。
①コーヒーやカカオのような深く焙煎したモルト由来の香り。青リンゴや熟したフルーツのようなホップ香が奥行きを付加
②漆黒に近いダーク・ブラウンの液体に、こんもりと浮かぶ薄茶色のきめ細やかな泡。口に含むとコーヒーのような苦味が広がるが、その奥に感じる甘味がバランスを取る
③焙煎した苦味の余韻が長く持続。クリーミーな口当たりながらも、フルーティーな香りと後味の酸味で、喉をすっと通っていく

さぁ、ビールに合わせる料理は浮かびましたか?

時には食文化や好みも手がかりにして

「食文化」や個人の「好み」もペアリングに生かしてみましょう。一般的に、スタウトのような濃色で香ばしさが強いビアスタイルとのペアリングには、同様に色が濃く、香ばしさや濃厚で複雑な香味を持つ料理が良いとされています。その一方で、焙煎したことによる苦味をバニラアイスの甘味で中和するといったことも、美味しいと感じればそれもまた一つの正解です。

では、それも踏まえて...一番搾りスタウトの特徴に合わせ、私ならこうアプローチしてみます。
①同じくローストした豆や木の実類を使った一品と。エステルのフルーツに似た風味との相性の良さも期待
②苦い→甘い→苦い...の味の変化を楽しむ。ビールに負けない濃厚な口当たりかつ優しい甘味の食材でバランスをとる
③焙煎したことによる苦味を伴う味わいと、すっきりした後味はコーヒーのそれに近い。洋菓子をつまみながらコーヒーを飲む情景をイメージして料理を考案

「和化粧のナッツ」との相性は★★★★☆

今回のペアリングは「和化粧のナッツ」です!!

「キリン 一番搾りスタウト」×「和化粧のナッツ」
「キリン 一番搾りスタウト」×「和化粧のナッツ」

カシューナッツにみりんを絡ませ、きな粉を化粧した一品。軽く焙煎した食材同士違和感なく調和、かつみりん由来の優しい甘味と旨味も感じ取れます。濃厚なカシューナッツの甘味の中に見え隠れする、きなこの余韻もまた良しですね。

そこに、一番搾りスタウトを一口。ローストしたほろ苦さを感じつつも、甘味ときなこの香りが生きています。アルコールの余韻が弱く、比較的軽い飲み口だからこそ、きなこの繊細な香りと共存。カシューナッツの食感がみりんの水分で柔らかくなったことで、ビールとも馴染みやすくなりました。深く焙煎した麦のテイストが加わることで、焦がしキャラメルや駄菓子のきなこ棒にも似た風味となり面白い! 休日の昼下がりにコーヒータイムならぬ、ビア・タイムがぴったりなペアリング、★★★★☆です。

今回はコーヒーから連想して一番搾りスタウトに和化粧のナッツを合わせました。軽やかな飲み口を持つドイツの黒ビール「シュバルツ」はもちろん、中等色のビールなど、モルトの焙煎度合い(ビールの色)に合わせても良いペアリングが期待できそうです。

次回は、ドイツ・バンベルグ地方発祥のあのビアスタイルにペアリングを試みます。ご期待下さい♪ 

【ビアプロフィール】
商品名 : キリン一番搾り スタウト
アルコール度数 : 5.2%
原材料 : 麦芽・ホップ
醸造所:キリンビール株式会社
問い合わせ先:0120-111-560(お客様相談室)

■和化粧のナッツ
【材料】
ミックスナッツ(お好みのナッツ) 45gほど
本みりん 20cc
きな粉 適量

【作り方】
1. 小鍋で本みりんを、中弱火程度で沸かす
2. 水分を飛ばし少しとろみが出てきたら、ナッツを入れ煮絡める
3. ナッツ同士がくっつき始めたらすぐ、多めにきな粉を入れたボウルに移す。箸などで優しく転がしながらまぶして完成
※分量は目安です。お好みでご調整ください。

佐藤翔平

ビアジャーナリスト。酒類に詳しくなる為にビールから飲み歩き始め、その多様さに魅了される。飲食店勤務の傍らティスティングを行い、その記録は500を超える。JBCA認定ビアテイスター。ジャパンビアソムリエ協会(JBSA)認定ビアソムリエ。