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コラム

2019.11.29

【06】1 Day 1 Beer プロジェクト─職人気質と個性が両立する、NY・ブルックリンビアシーン

千田 晋 千田 晋

今回はアメリカ滞在最後の地、ニューヨーク(NY)からお伝えします。
NYも随分とブルワリーが増えているようですが、ここ5年でビアスポットが急増しているブルックリンを中心に探訪しました。
2000年前後から多くのアーティストが移り住み、今やマンハッタンよりも人気が高く地代も上昇しているブルックリンのグリーンポイント周辺はどこもクールでハイセンスですが、その中でも印象的なビアバーとブルワリーをご紹介します。

@TORST

デンマーク出身のブルワーが2013年にオープンしたビアバー「TORST」は、北欧モダニズムベースに白と木目の2トーンでデザインされたお店です。そのシックかつカジュアルな雰囲気は、外観も店内もパっと見はビアバーとはわからないくらい。白のタイルに並ぶ21本のビアタップ、そして鏡に書かれたタップリストはさり気ないこだわりを感じさせ、店内はNYのクールな人たちで溢れ返っていました。

◆MODERN HELL Jack’s Abby/ケラービール/Alc.5.2%/IBU na
ブルワリーが出荷前に地下室で貯蔵する、ケラービール。モルト風味と甘みのあるボディに、若干フローラルな感じもするイーストのキャラクターが感じられる味わいで、とてもテイスティですね。

バレルを置いてるブルワリーは結構目にするもののケラービールはあまり見かけません。しかし、ブルックリンでは美味しいケラービールを造っているブルワリーがいくつかありました。

次は、同じグリーンポイント内のビアバーで飲んだここのビールがとても美味しかったので、早速ブルワリーへ行ってみました。

@INTERBORO SPIRITS & ALES

3年前に創業した「INTERBORO」は、ブルックリンで唯一、ビールと蒸留酒の両方を製造しているブルワリー。ウェアハウスを改装したタップルームは飾り気が無いながらもシンプルでクール、そしてリラックスな雰囲気が漂う、さり気ないハイセンスさを感じさせます。お店のスタッフもクールでとてもフレンドリーですね。

毎年春にはローカルブルワリーのピルスナーだけを集めたイベントを開催しており、ホップ一辺倒ではない、よりオーセンティックなビールの魅力を追求しているように感じます。

◆INTERBORO SPIRITS & ALES Double Fluffed/インペリアルスタウト/Alc.11.0%/IBU na(画像右側)
NYロングアイランドのブルワリー「ROOT + BRANCH BREWING」とコラボしたインペリアルスタウト。ダークブラウンシュガーとココナッツをレシピに組み込み数カ月間熟成させた、芳醇なチョコレート風味と甘み、フィニッシュにココナッツ感も感じさせる、大変シルキーでスムースなフルボディのビールです。チョコ系のデザート感覚としても楽しめますね。


約5年前から活性化し出したブルックリンのビアシーンは地理的にスポットが密集している分、頻繁にコラボを繰り返しながら密接なシーンを形成しており、クオリティの高いビールが多い印象です。

高い職人気質を尊重するNYらしく、時流は早いながらもどこか地に足の着いたシリアスさをブルワリーから感じ、またビアバーからは遊び上手な飲み手の気分を上手く汲み取る雰囲気作りの強いビアバーが多いですね。

物事が熾烈なNYでは特に、何かに特化する強みがないと生き残れないように感じました。それだけ、造り手も飲み手も感性が高いのでしょう。 

千田 晋

「Brewer's Beer Stand 34」オーナー。映画業界を経てクラフトビール業界入り。ブルワーとセールスに従事し、クラフトビアバーをオープン。海外在住時に魅了されたビールの自由さを、様々なカルチャーを交えて多くの人に伝えたい!