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コラム

2019.12.27

【09】1 Day 1 Beer プロジェクト─ビアライゼで巡り合った、最高のビアスポットと最高の1杯

千田 晋 千田 晋

ポルトガル・リスボンから始まったヨーロッパ大陸のビアライゼもだいぶ北上してきました。今回はベルギーの次に訪れたオランダ・アムステルダムとドイツ・ベルリンの中から、特に感銘を受けたビアスポットをそれぞれ一箇所ずつご紹介していきます。

@Cafe ZILT

アムステルダム市内のブルーパブをハシゴしていく中で、どのお店にも勧められたのがこのビアバー。周りの評判も私の期待も裏切らない、個人的に今回のビアライゼの中でベストなビアバーでした。

カウンター越しに見える棚が物語っているように、ZILTはウィスキーバーとビアバーを謳うクラシカルな雰囲気のバーです。その雰囲気に相応しいフォーマルな装いのバーテンダーは、長い経験と深い知見に裏打ちされた柔和な接客で、今回の訪問の目的や味の趣向を聞いた上でビールをセレクトしてくれました。そのビールの背景やアムステルダムのこれまでのビアシーンの状況などを聞きながらビールをゆっくり味わうことができ、うっとりとしてしまうほどの素晴らしいビアタイムを過ごすことができました。

◆VAN VOLLENHOVEN Extra Stout/エクストラスタウト/Alc 7.1%/IBU 57

80年代でオリジナルのVOLLENHOVENの醸造は終わってしまいましたが、今回飲んだのは、近年若い醸造家がかつてのVOLLENHOVENを復刻させたもの。リッチなモルトの焙煎香と若干強めな苦みをスムースなマウスフィールのボディでスルッと飲ませる、ストレイトフォワードなスタウトでとても美味でした。ちなみにオリジナルは、復刻版よりもヘヴィーなテイストだったそうです。

いわゆるクラフトビアシーンは3〜5年前くらいから活性化し出した新しい波のようですが、それ以前から醸造を続けるブルワリーやブルーパブ、またビアバーが良い関係性を保ちながらお互いの歴史を共有し、決して大きくない街、アムステルダムのビアシーンを充実させているように感じました。

そして次のドイツは、あえてビールで有名な場所ではなく、多面的な文化が豊富なベルリンを訪れました。クラフトビールが本格的に盛り上がってきたのは約3年前からとのことで、ドイツのビール市場におけるクラフトビールのシェアは0.5%とまだまだ成長過程。しかしながら良いビールを造るブルワリーが増えているようで、人々のクラフトビールへの関心が高まってきているようです。

@VAGABUND BRAUEREI

2011年に3人のアメリカ人によって創業されたVAGABUNDは、200Lに満たない小さな仕込釜でスタートしたナノブルワリー。現在は同じエリアに新設ブルワリーを建設中とのことで、上昇気流に乗っているようです。

こぢんまりとしたタップルームはとてもフレンドリーで居心地のいい空間。産まれて数日の赤ちゃんを抱き抱えて乾杯している人や、その他の大勢の地元の人々で埋め尽くされた店内の様子からは、ビールで人を繋ぐ理想的なコミュニティスペースを形作っている理想的なタップルームだと感じました。

◆VAGABUND BRAUEREI Annie Oakley/ブラウンエール/Alc 6.2%/IBU na

スタウト並みに限りなく黒色に近いボディのブラウンエールですが、何とも豊かなモルトの風味が飲む前からフワリと香ります。適度な甘みとキャラメルかつクリスピーな風味が深く味わえる、ミディアムフルボディの素晴らしいブラウンエールですね。今回のビアライゼの中で飲んだブラウンエールの中でベストでした。
今のところ定番液種は設けず、常にワンオフで意欲的なビアスタイルも醸造しながら、同じレシピに改良を加えて繰り返し醸造している液種もあるようです。それでも6タップ全てをハウスビールのみで回転させているところはさすが。

こぢんまりとしていますが、ここのビールを一度味わうと、その小ささと飾り気のないスタンスがとても心地良く感じられます。規模は小さくても、ビールが持つ多面的な文化を豊かに感じさせてくれる、印象深いタップルームでした。

今回紹介したアムステルダム・ベルリンでは特に、そこかしこにこれまでのビールの歴史を感じさせる部分があり、新しいビアカルチャーにもどこか奥行を感じさせるのが印象的でした。 

千田 晋

「Brewer's Beer Stand 34」オーナー。映画業界を経てクラフトビール業界入り。ブルワーとセールスに従事し、クラフトビアバーをオープン。海外在住時に魅了されたビールの自由さを、様々なカルチャーを交えて多くの人に伝えたい!